カルザイ大統領の命を狙うのは誰か?

執筆者:春名幹男2002年9月号

 アフガニスタンの首都カブール、アメリカ大使館から角を曲がった通りで七月二十九日朝、トヨタのランドクルーザーと衝突したカローラが急発進して逃走、治安部隊に捕まった。逮捕されたのはあごひげの若い外国人男性。カローラ車内から約五百キロのTNT火薬などが発見された。半径五百メートル以内のビル二棟を倒壊させるほどの爆発力といわれる。 現場はハミド・カルザイ大統領の官邸も近い。地理的な状況からして米大使館か大統領官邸を狙った自爆テロ未遂か、とみられた。 だが、この事件をめぐるアフガニスタン内務省と情報機関である国家安全総局の発表はニュアンスが微妙に異なっていた。 現地からの報道によると、アフガニスタン内務省はこの事件でもう一人の犯人を逮捕した。ディン・モハメド・ジュラト治安部長は「アル・カエダかイスラム党と関係があるとの強い疑いを持っている。現在、イスラム党はアル・カエダと同盟関係にある」と語った。しかし、国家安全総局は「逮捕者は一人だけ。当然、カルザイ大統領がこの男の目標の一つ」と言うのだ。 どうやら、国家安全総局が、カルザイ大統領の身辺の危険性を強調しようとしているのに対し、内務省はイスラム党の方が危険と強調しているようだ。米中央情報局(CIA)がこの春、イスラム党の党首、グルブディン・ヘクマティアル元首相暗殺を企てて失敗した、という経緯もある。だが、内務省は大統領に近いが情報機関は大統領と対立している、という事実から見た方が理解しやすい。

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