「まだ何も決めていない」――ブッシュ米大統領は、イラク攻撃について質問される度にそう答えてきた。 だが現実には戦争準備は秘密裏に着々と進んでいる。アメリカはペルシャ湾岸に向けて武器や兵員を続々と投入し始めた、との情報が断片的に伝えられているのだ。 英インディペンデント紙によると、米海軍はこれまで三件、民間海運会社とチャーター契約を結んだ。戦車などの戦闘用車両やミサイル、弾薬などを大型貨物船で輸送する計画。さらに、英オブザーバー紙によると、カリフォルニア州のペンドルトン基地から二万人の海兵隊員が十月中旬に輸送される予定という。いずれも目的地は不明だが、イラク周辺の親米諸国であるのは確かだ。 米英両軍の特殊部隊がトルコのインジルリク空軍基地近くに出撃基地を設けたとの情報も流れている。そうした情報はどういうわけか、ワシントンが発信地ではなく、ほとんどがイギリスからの報道だ。 十一年前の湾岸戦争の時は、鳴り物入りで続々現地に兵員・装備が投入された。今度は、戦争準備はひそかに進められている。だが、いずれにせよ状況は酷似している。湾岸戦争の時と同様に、ゆっくりとしかし着実に現地への戦力投入が続いている。

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