マイクロソフトの“敵”

執筆者:2003年1月号

「世紀の裁判」と呼ばれた独禁法訴訟は和解で事実上決着し、独り勝ちの構図は温存された。しかし強さはときに仇となる。欧州、中国をはじめとする各国の政府、企業に不信感を芽生えさせ、オープンソースを世界に伝播させる原動力となった。[パロアルト発]パソコン革命の先導役となり、いまや世界を代表する巨大企業となったマイクロソフト。情報技術(IT)不況が長期化し、競合他社が業績低迷に喘ぐなか、その強さは際立っている。「(IT業界の)経営環境が厳しいなかで、我々は幸いにも成功を収めている。研究開発に力を入れてきたおかげだ」 二〇〇二年十一月中旬、米ラスベガスで開かれた世界最大級のハイテク見本市「コムデックス」。その前夜祭の基調講演に立ったビル・ゲイツ会長は、自信満々の表情で研究開発戦略や中長期ビジョンを熱っぽく語った。 マイクロソフトはパソコン用OS(基本ソフト)市場での圧倒的な支配力を武器に増収増益基調を維持。手元資金(現預金と短期保有の有価証券の合計)は九月末で四百億ドルを超える。これは全米企業で最大の規模だ。豊富な資金を研究開発や、技術力を持つ新興企業の買収に貪欲に投入。二〇〇三年六月期の研究開発投資額は前年度実績比約二割増の五十二億ドルに達する見通しだ。

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