露骨に動き出した小泉再選戦略

執筆者:2003年2月号

 一月七日午前十一時半すぎ、自民党の新年祝賀会が党本部九階の大会議室で始まった。司会の松谷蒼一郎前官房副長官に促され、談笑の輪を抜け出した小泉純一郎首相は、登壇すると緊張した表情で語り始めた。「新たな気持ちを持って、内外の政治課題に皆さんとともに取り組んでいきたい。内政、外交とも難問山積。今年も皆さんの協力と与党三党の結束を大事にしながら、内外の予想を超える事態にも対応し、諸々の改革に取り組んでいかなければならない」 構造改革推進を訴えるいつもの内容のようだが、対決も辞さずの強気の物言いは、この日は一切なかった。目立ったのは厳しい状況認識と結束を求める発言だ。出口の見えないデフレ不況、緊迫化するイラク、北朝鮮情勢。首相の胸中を占めていたのは、嵐の海に出航する船長のような心境だったに違いない。「理想追求」路線から「現実対応」路線への転換 自信より不安。そして重圧。それは前日の年頭記者会見にも表れていた。「小泉改革が進んでいないのではないかと批判する方々に申し上げたい」と、延々とまくし立てた昨年の冒頭発言と打って変わり、今年は「多事多難だと思いますが、誠心誠意職務に精励いたしますので、よろしくお願いいたします」とあいさつしただけ。必死でメモを取り始めた記者団を拍子抜けさせた。

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