「人口問題」が爆発する

執筆者:堤伸輔2003年3月号

ただ食糧が不足したり、難民が増えたりするだけではない。世界の様相がガラリと変わるほどの人口変動が刻々と現実化している。 昨年十二月に国連人口基金が発表した「世界人口白書」によれば、二〇五〇年には九十三億人(中位推計)に達する世界人口の中で、貧困状態に置かれる人々の数は何と五十四億人にも上るという。 人口問題は、数年の内に身近に激変をもたらす類のものではないだけに、世論をさほど喚起することもなく、国家の政策にも反映されにくい。しかし、「人口」は着実に膨らみ続け、やがて爆発する日を待っている。激増だけが問題ではない。急減、そして、国内や国家間で発生する不均衡によってもたらされる問題――。 バランスの崩壊の典型例は、米国とヨーロッパとの間で起こるだろう。今後半世紀の間に、米国の人口は大きく伸びるのに対し、EU(欧州連合)の人口は着実に減っていくことが右頁のグラフから見て取れる。先進国中でほぼ唯一、人口が大幅に増える米国では、黒人やヒスパニックといった、近年、人口増に寄与してきた層だけでなく、白人女性の合計特殊出生率(一人の女性が生涯平均何人の子供を産むかの推計値)も回復し、人口急増が予測される。国連の高位推計すらも上回って、二〇五〇年には五億五千万人にも達するという見方もある。

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