ヨーロッパの「没落」で増大する米国の力

執筆者:名越健郎2003年3月号

米欧間のパワーの均衡によって世界がうまくコントロールされた時代が終わろうとしている。「ユニラテラリズム」(単独行動主義)といえば、ネオコン(新保守主義者)が主導するブッシュ米政権の専売特許と思われがちだが、米国が圧倒的な力と意思で世界を動かす構図は今後、一段と鮮明になるだろう。軍事や経済だけでなく、「人口」という要素が決定的な意味を持つからだ。 先進国で二十一世紀に人口が大幅に増加するのは米国だけ。日本も欧州連合(EU)もロシアも老い行く「黄昏の国」であり、中国も少子高齢化社会を迎える。主要国では米国だけが、高い出生率と移民の吸収で、若く発展を続ける「途上の国」なのである。 米国の人口調査機関、人口調査社によれば、現在二億八千七百万人の米国の人口は、二〇五〇年には四六%増の四億二千万人、二一〇〇年にはほぼ倍増の五億六千万人に達するといわれる。政府(低位)推計で百年後に四千六百万人にまで減少するとされる日本とは圧倒的な格差が生じてしまう。 英誌エコノミスト(二〇〇二年八月二十四日号)は、「人口動態の要素は、社会・経済的な要因よりも重要なインパクトを持ち、政治家や経済学者、国際関係専門家は人口問題にもっと関心を寄せた方がいい。……米国では今、驚くべき変化が起きており、この傾向が続けば、米欧間に恐るべき格差をもたらすだろう」と述べ、人口増をEUの政策課題とするよう訴えた。

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