ブッシュ米政権による「レジーム・チェンジ」(政権交代)は、イラクのフセイン政権だけを対象にした政策ではないようだ。 実は、米政府は北朝鮮に対して、幾度となく政権転覆の可能性を検討してきた。一九九四年の「核危機」の際、クリントン政権は一時北朝鮮との全面戦争さえ覚悟した。九八年のテポドン発射実験後の「ミサイル危機」の時にも、一つの選択肢として金正日政権の打倒を検討した。当時大統領特使だったウィリアム・ペリー元国防長官は最近ニューヨーク・タイムズ紙への寄稿記事で「北朝鮮国内に反体制派が存在する証拠はほとんどなく、十分な時間もなかった。同盟諸国もこのオプションを支持しないだろう」との理由で断念した、と明らかにしている。 それでは、今度の新たな核危機ではどうするのか。週刊誌ニューヨーカー一月二十七日号で、「ブッシュとチェイニーは皿に載せたあいつ(金正日総書記)の首を望んでいる」というくだりを読んでぎょっとさせられた。 すっぱ抜きで有名な元ニューヨーク・タイムズ紙記者セイモア・ハーシュ氏が米政府情報当局者の話として紹介しているのだが、あながち冗談と無視できる話ではなさそうだ。ブッシュ大統領はワシントン・ポスト紙のボブ・ウッドワード記者とのインタビューで、「私は金正日が(蛇蠍のごとく)嫌いだ。私はこいつにははらわたが煮えくり返る。自分の国民を飢えさせているのだから」と憤懣やる方ない仕草をしながら述べたという。大統領は、表向き「(北朝鮮の問題は)外交で平和的に解決する」と平静を装ってはいるが、本音では相当な嫌悪感を抱いているのだ。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。