米軍のイラク攻撃は、国連安全保障理事会の討議が延びて、当初目標より大幅に遅れる結果となった。だが、情報戦争の立場からすれば必ずしもマイナス面ばかりではなさそうだ。 フセイン大統領周辺の幹部やイラク軍高級将校らエリートたちをターゲットにした心理作戦には時間の余裕ができたし、開発中のスパイ機器を対イラク戦で試験投入する準備期間もとれた。二月末で六百カ所を超えた国連査察のおかげで、さらに詳しいイラク国内の軍事情報が得られた。開戦までに、未知の大量破壊兵器の隠匿情報を入手できるかもしれない――そんな期待感さえあるのだ。 イラクに対する心理作戦は、eメールや携帯電話、ラジオの謀略放送、ビラによるいわばローテクの情報戦争。 二月中旬にはまず、イラク軍・政府エリートの私用のeメールアドレス、続いて携帯電話の番号に、メッセージが流された。内容は公開されていないが、アラビア語で「フセイン大統領は裏切り者だ」「フセイン政権に未来はない」「米軍に対する抵抗は無意味だ」などとフセイン政権に対する反抗や投降を呼び掛けたようだ。 それにしても、イラクのエリートたちのメールアドレスや携帯電話番号のリスト作成は容易ではなかっただろう。

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