北朝鮮の脅威を独自情報で確認できるか

執筆者:春名幹男2003年7月号

 ちょうど十年前の一九九三年六月十一日早朝、横浜市青葉区の田園都市線あざみ野駅。当時の官房副長官石原信雄がいつものように電車に乗ると、彼を取り囲むようにして、番記者たちもそそくさと車内に駆け込んだ。 車中で石原は自ら重大な事実を口にした。「北朝鮮が日本海でミサイルを発射した」。 それがノドン・ミサイル発射の第一報となり、その日の夕刊はこの「政府筋」発言を大きく報じた。 ちょうどカンボジアで日本人二人が犠牲になった直後のことで、日本国内では派遣自衛隊員の武器使用の是非をめぐって議論が起きていた。「日本海でミサイルが発射されているのに、小銃の使用をめぐる是非の論議など感覚がおかしいと思った」と石原氏は言う。 通勤電車の中でのリークには驚かされるが、問題はそれだけではない。石原氏はノドン発射の情報源は「中東筋」だったと認めている。初期情報は北朝鮮のアラブ諸国へのミサイル輸出を警戒するイスラエルがもたらしたのだった。 五年後の一九九八年、北朝鮮はテポドン・ミサイルを発射した。 そして、その五年後の五月二十三日朝、テキサス州クロフォードのブッシュ米大統領私邸のリビングルーム。お泊まり首脳会談で温かくもてなされた小泉純一郎首相は朝食後、異例のサービスを受けた。大統領が毎朝、中央情報局(CIA)から受ける、いわゆる大統領デイリー・ブリーフ(PDB)への同席を認められたのである。

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