ブッシュとブレアは「嘘」をついたのか

執筆者:田中明彦2003年7月号

 バグダッド陥落から二カ月がたち、国際政治は、戦争の局面から外交、さらには内政と外交が密接に連関する局面に入った。エビアンでのG8サミットを挟んで、世界各地で頻々と首脳会談が行なわれた。 小泉首相もテキサスで日米首脳会談を行なった足で中東に回り、さらにG8サミットに出席する途中、サンクトペテルブルクでロシア、中国との首脳会談を行ない、帰国するやいなや、ASEAN(東南アジア諸国連合)の首脳との会談、そして韓国の盧武鉉大統領を東京に迎えた。ブッシュ大統領もエビアンのサミットから中東に飛び、シャロン・イスラエル首相とアッバス・パレスチナ自治政府首相の間のロードマップ(行程表)合意に立ち会った。窮地に立たされたブレア首相 外交的というよりも、内政とからんで今後の行方に影響を与えかねない問題は、イラクで大量破壊兵器がいまだに発見されないという問題である。これに関連して、イギリスとアメリカでは、イラク戦争開戦に至る過程で、イラクの大量破壊兵器保有に関する情報が恣意的に操作されたのではないかとの疑惑が持ち上がっている。『ニューヨーク・タイムズ』紙社説は、「われわれは、サダムが権力から追われたことを歓迎するものであるが、アメリカは、ブッシュ政権の行なったイラクの兵器の脅威に対する重大な警告を記録から消し去るわけにはいかない」とし、これと現実に大量破壊兵器が発見されないことの矛盾をどう考えればいいのかと問題提起している。

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