[バンコク発]ミャンマー民主化問題は、軍事政権による民主化運動指導者アウン・サン・スー・チー国民民主連盟(NLD)書記長(五八)の身柄拘束など一連の強権発動で、振り出しに戻ってしまった。スー・チー氏がNLDを旗揚げして間もない一九八九年七月に、当局によって国家破壊分子法違反で最初の自宅軟禁に置かれ、政治活動を禁じられた時とほぼ同様の状況で、実際のところ、これまでの十四年間、軍政とスー・チー氏の対立の構図はまるで変わっていない。むしろ、スー・チー氏が昨年五月に二度目の自宅軟禁から解放されて以降、互いの積年の憎悪が事態をさらに悪化させた。 軍政当局は、五月三十日以来続けているスー・チー氏に対する拘束を解いても、自宅軟禁に切り替えてスー・チー氏の行動を長期間束縛する方針を固めているとされる。自宅軟禁の解除、そして現在全面封鎖している全国のNLD本部・支部の一部再開と政治活動の段階的な容認。その後に想定されるこれら一連の軍政側のシナリオは、NLDに対して過去十四年間取ってきた「アメとムチ」の手法の繰り返しでしかない。首都ヤンゴン駐在の外交筋は、「死者一千人以上が出たといわれる八八年九月の大規模な軍と市民の衝突のような流血の事態でもなければ、軍政支配の終焉はない」と不穏かつ大胆な予想をする。

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