ブッシュはなぜアフリカを訪ねたか

執筆者:田中明彦2003年8月号

 この一カ月も世界各地で多くの外交活動が行なわれたが、他の問題を圧するような問題はなく、国際的な論調はさまざまな方向に拡散している。その中では、やはりイラク戦争に至る過程で、アメリカやイギリスの指導者が国民に対して情報操作をしていたのではないかとの疑惑が一つの論点となっている。 現時点で考えるとアメリカ政府もイギリス政府も、イラク開戦以前の情報提供については良く言って相当杜撰かつ無能であり、悪く言えば無責任だったことは否定できない。ブッシュ大統領が一月の一般教書演説で、イラクはアフリカの国からウラニウムを購入しようとしたと語ったことは、ブッシュ政権が認めたように根拠のない情報に基づいていた。この内容が演説に挿入されたのはCIA(米中央情報局)の責任であることも公式に表明された。また、イギリスでもブレア首相などが語った「四十五分でイラクは大量破壊兵器を投入できる」とする情報が根拠薄弱だったことが明かされた。「欺瞞」を認めた米英 ブッシュ政権に批判的な経済学者のポール・クルーグマンなどは、ホワイトハウスのホームページに掲載されている昨年十月七日のブッシュ演説が「否定と欺瞞」(“Denial and Deception”)というタイトルだったことを挙げ、「実にその通り」と皮肉をこめて批判している。大統領が国民に戦争の真相を見誤らせかねないようなことを語ってきたことについて、文言上に明白な誤りがなければ放免すべきだとの声もあるが、そうはいかないとクルーグマンは言う。

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