対北朝鮮「六者協議」に交錯する思惑

執筆者:田中明彦2003年9月号

 夏にはいり、国際情勢は拡散した動きが続いている。そのなかでは、やはりイラク、朝鮮半島が大きな問題と位置付けられよう。イラクで統治評議会が成立したが、依然として不安定な情勢が続く。朝鮮半島では、北朝鮮が六者協議の開催に同意し、核開発問題の進展に、狭いとはいえ、ある種の道筋がみえてきた。 東南アジアではフィリピンでのクーデター騒ぎ、ジャカルタでのテロなど不安定な動きが続く一方、カンボジアでの選挙が滞りなく行なわれるなど、積極的な動きもみえる。中国はどこまでコミットするか 北朝鮮をめぐる問題のなかから浮かび出てきた一つの焦点は、中国外交の存在感であった。四月に北京で行なわれた三者協議も、このたび北朝鮮がその開催に合意することになった六者協議も、中国外交の一つの成果とみなすことができるからである。『フィナンシャル・タイムズ』紙社説によれば、「十五世紀に中華帝国が海外発展の道を放棄して以来、この世界最大の人口大国は、内向きで孤立主義的であったと見なしてよい。国連安保理の常任理事国としての低姿勢も、国際問題に巻き込まれたくないとの態度を確認するものであった」。しかし、「二十一世紀にはいってからの中国の態度は変化しつつある。北朝鮮核開発計画をめぐる、深刻さの増す危機を解決しようとの外交的努力に、そのことは典型的に現れている」という(“China's new role in world affairs”『フィナンシャル・タイムズ』、七月二十一日)。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。