結果を暗示するような、対照的な光景だった。自民党総裁選が告示された九月八日、党本部で相次いで行なわれた小泉純一郎首相と亀井静香前政調会長の出陣式である。 午前十一時から党本部七階で始まった小泉陣営のそれは、さながら祝勝会のような賑わいだった。森、山崎、旧加藤の主流三派議員に加え、山崎拓幹事長、麻生太郎政調会長、堀内光雄総務会長ら党幹部も続々と詰め掛け、会場のあちこちで談笑の花が開いた。推薦人代表としてあいさつした森喜朗前首相が苦笑しながら「皆さん、何となく笑みを浮かべているが、選挙はこれから始まるんです。引き締めていってほしい」とたしなめたほどだ。割れんばかりの拍手で迎えられた首相は「『改革なくして成長なし』の路線を曲げてはならない。自民党を改革推進政党にする」と力強く宣言した。 小泉陣営が散会して間もなく、五階で亀井陣営の出陣式が始まった。姿を見せたのは亀井氏が会長代行を務める江藤・亀井派の面々だけ。しかも、その数は同派所属議員五十九人の半数にも満たない二十人余りだった。欠席理由の多くは「党員・党友対策のため地元に戻る」だったが、小泉政治を全面否定する亀井氏の擁立に乗り気でないメンバーが「地元入り」を口実にサボタージュした、というのが実態に近かった。

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