「格上げ」で危うさが増したロシア市場

執筆者:田村洋佑2003年11月号

誰もが行き過ぎだと思っている強気相場。国債の格上げをきっかけに、このうえさらに米欧マネーが流れ込めば……[ロンドン発]「歴史が再び作られた」。モスクワに本社を置くロシアの大手証券トロイカ・ジアログは十月九日、顧客向けの投資資料のなかで誇らしげに宣言した。前日、米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスがロシアのドル建て国債の格付けを、「投資不適格」の範囲に入るBa2から「投資適格」のBaa3へと二段階引き上げたからだ。 投資適格の格付けは、投資家が安心して運用資金を投じるための重要な目安。一九九八年の金融危機でデフォルト(債務不履行)を起こしたロシアにとって、国際市場での信頼の証である投資適格への格上げは長年の悲願だった。 ムーディーズの動きは大半の市場関係者の予想を超えていた。「十二月の議会選挙の後だろう」「いや来年のプーチン大統領再選を確認してからではないか」。米欧のロシア・ウォッチャーは年初から、ロシア国債が投資適格になる時期を巡って議論を繰り返した。しかし、議会選挙の前に一気に二段階引き上げられるとは誰も想定していなかったのだ。 今回の格上げは相場が催促したともいえるだろう。代表的なドル建てロシア国債(期間十年、二〇〇七年六月二十六日満期、表面利率一〇%)は、今年初めに約六・四五%だった利回りが六月半ばに三・五%前後へ急低下(価格は上昇)。最近は四・一三%程度とやや上昇しているものの、投資適格にランクされるメキシコ国債に劣らない人気を誇っている。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。