テレビ事業の強化を通じた「安定した収益力」獲得を狙い、メディアの膨張戦略が加速する――。[ロサンゼルス発]「ウェルチ氏が今も経営陣にいたら、GEはビベンディ・ユニバーサル・エンターテインメントを買っただろうか」――。九月初め、米ゼネラル・エレクトリック(GE)子会社の大手ネット局NBCが、名門映画会社を傘下に持つビベンディ・ユニバーサル・エンターテインメント(VUE)を吸収合併すると聞いたソニーの出井伸之会長は、そんな疑問を口にした。 アメリカの新聞にも「GE、ハリウッドへ」といった見出しが躍った。この合併劇を捉える視線は、まず第一にここに集中する。当然だろう。ジャック・ウェルチ前GE会長は一九八六年のNBC買収以降、三大ネットとして競い合うCBSやABCが大手映画会社との結びつきを強める中で「ハリウッドに進出する気は全くない」と繰り返してきたのである。映画事業は浮き沈みの激しい水物と考えていたからだ。 ただ、耳目を集めている「世界有数の製造業がハリウッドに進出」という見方だけでは、この再編の本質を見損なう。ジェフリー・イメルト現GE会長もウェルチ氏の路線を否定した訳ではなさそうだ。むしろ、映画会社を吸収したという意識はほとんど無いだろう。新会社「NBCユニバーサル」の年間売上高は、二〇〇三年の単純合計で百三十億ドル(約一兆四千億円)の見通し。ユニバーサルは『E.T.』『ジョーズ』『ジュラシックパーク』など数々の大作で知られるが、実は新会社の売上高のうち、映画の興行収入が占める比率は一割にも達しないのである。

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