「新たなプラザ合意」という幻想

執筆者:小田博利2003年11月号

九月のドバイG7合意にマクロ政策上の整合性など存在しない。ドル安はいずれ秩序を失い、世界の金融・為替市場は暴風圏に突入する。 中東の湾岸諸国のひとつ、アラブ首長国連邦ドバイは百パーセント近い湿度がありながら、一年に数日しか雨が降らない。太陽は朦朧たる空気の中に消えてゆく。多くのインド人を雇う典型的なアラブの富裕国だが、旧宗主国・英国の流儀を引き継いだのだろうか普段は警察官など表に出ない。 そのドバイで九月下旬に警察官がそこかしこに姿を現した。国際通貨基金(IMF)・世銀総会が開かれたからだが、日本にとってドバイで九月二十日に開かれた七カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)から、蒸し暑く憂鬱な為替の季節が始まった。共同声明にうたった「柔軟な為替相場変動」という表現にすべてが尽きている。 日本の財務省による和訳は回りくどい表現になっているが、英文を見ると一目瞭然。「more flexibility in exchange rates is desirable......」。「柔軟な為替相場変動が望ましい」という結論をはっきりと打ち出しているのだ。人民元をドルに固定させている中国を批判しているばかりでなく、今年五月以降、円を事実上固定するような大量介入を行なってきた日本を牽制していることは、明らかだろう。

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