十月十日午後一時すぎ、衆院本会議場に、詔書を朗読する綿貫民輔議長の声が響いた。「日本国憲法七条により衆議院を解散する」。万歳三唱する与野党議員の後姿を、小泉純一郎首相は最後列から落ち着き払った表情で見詰めていた。 この日に至るまで、政局は大筋で「自民党総裁選に大勝し、その余勢を駆って解散・総選挙に打って出る」という首相のシナリオ通りに展開してきた。この日朝、記者団から心境を問われた各党党首が口々に決意を語る中で、首相は「普通だね」の一言しか発しなかった。この選挙は普通にやれば勝てる。言外に、そんな余裕と自信がにじみ出ていた。 本会議後の自民党両院議員総会でのあいさつも「貫録勝ち」を意識したものだった。「今まで進めてきた改革の成果を上げ、改革路線を定着させるため、安定勢力の下に改革を進めていかなければならない」。絶叫調になったのは「頑張って必勝を目指そう」という最後の部分だけだった。 自信満々の首相に「思い上がりだ」と警告を発したのは民主党のベテラン、石井一副代表だ。本会議直前の同党代議士会。司会者に「喝を入れてほしい」と促されてマイクを握った石井氏は「十一月九日に選挙結果が出ると今回の解散はおそらく『思い上がり解散』『思い違い解散』と命名されるだろう」と切り出した。

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