財務省は国債の押しつけ先として公社を狙う。一方、公社自体も着々と事業を拡げており……。「郵貯のお金をどうやって成長分野に振り向けるか。それが郵政民営化の本質で、財政投融資の問題だ。私が総理となって初めて手をつけようとしている」 小泉純一郎首相がこう主張して、総選挙の金看板として掲げた郵政事業の民営化。経済財政諮問会議では民営化に向けた論議もスタートし、一見、政権の望む方向に事態は着々と進んでいるように見える。 しかし、公社を巡る「実態」はむしろ逆だ。財務省が三百五十兆円の資金を有する郵貯・簡保資金を「国債管理政策」の名の下に傘下に収めようと画策する一方、政府、自民党内には露骨に民営化に反対する動きがある。日本郵政公社自体も業務拡大に邁進中だ。公社が「民業を圧迫する財投機関」と化す可能性は、むしろ強まってきている。消えた郵貯・簡保廃止論 郵貯・簡保資金が注ぎ込まれる財政投融資制度の最大の問題点は、市場の価格形成機能を経ることなく、多額の資金配分が政府や官僚制度の枠の中で決定されてきたことだ。そうした弊害を是正すべく、二〇〇一年四月に財投改革が実施され、郵貯や年金資金の財務省資金運用部に対する預託義務が廃止されるとともに、自主運用が始まった。形式上、郵貯・簡保は財投への強制的な資金の出し手ではなくなったのである。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。