【ブックハンティング】 大失敗した世紀の大合併

執筆者:ジェニファー・サックス2003年12月号

 今年九月十八日、AOLタイム・ワーナー社は、企業名からAOLをはずすと発表した。それが何を意味するのかは、本書『スティーリング・タイム:スティーブ・ケース、ジェリー・レビン、そしてAOLタイム・ワーナーの崩壊』を読むとよくわかる。世紀の巨大合併は、音を立ててついに崩壊したのだ。 二〇〇〇年一月、時価総額三千二百億ドルという米史上最大の合併に合意したAOLとタイム・ワーナーは、未来のメディア企業を創造すると高らかに謳いあげた。だが、まともな人間なら誰でも思ったはずだ。「いったい何を考えているんだ」と。『ワシントン・ポスト』紙の経済記者である著者のアレック・クラインも当初から懐疑の念を抱き続けた一人だった。 AOL創業者のスティーブ・ケースにとって、答えはシンプルだった。当時、インターネットの雄となった同社の株は天井知らず。だが一九九九年の秋には、彼はすでに自社の株価が下落傾向にあることに気付いていた。では、その時、手元にある資金を最大限に活かす方法は何だったか。巨大メディア・エンターテインメント企業の買収だった。他のメディア企業が応じてくれなかったので、ケースはタイム・ワーナーとの話を進める。この合併により、AOLは映画会社、音楽産業、出版社、テレビ局を手に入れられるだけでなく、AOLの通信を旧式のダイヤルアップからブロードバンドに切り替えられるケーブルまで手に入れることができたのだ。

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