[カイロ発]サウジアラビアではこの一年以内に、十四の地方評議会の選挙が行なわれることになった。選挙が実施されれば、サウジアラビア建国以来初めてのことだ。この選挙実施の決定は、国民の政治に対する不満の増大を背景にしており、王政が「ガス抜き」効果をねらったものと考えられている。 サウジアラビアは、様々な社会的・経済的矛盾を抱えている。人口増加率は三%を超え、国民の過半数は十五歳以下だ。増え続ける人口に対して職の供給が追いつかず、失業率は一般男性の一〇%に達すると見られている。男子大学生の三〇%は、卒業しても就職できない状態だ。また、石油ブームの絶頂期と比較すると、一人当たりの所得は二分の一以下に落ち込んでいる。政治への不満は、イスラムの宗派、性別、イデオロギー、地域を問わず、あらゆる階層に見られている。 反王政を標榜するイスラム原理主義勢力は、王政が真の信仰の道から逸脱していると考えている。彼らは、外国企業から莫大なコミッションや賄賂を受領する王族の不正や腐敗を批判しており、国民の広範な支持を集めるようになった。 湾岸戦争後にファハド国王は、国内外からの圧力によって、民主化の一環として従来より大きな権限を地方自治体に与えた。しかし、地方の行政府を牛耳るのは、結局、サウジ王族だった。地方自治体に対するこの措置は、改革を求める階層の誰をも満足させるものではなかった。病気で国王としての執務が不可能になったファハド国王に代わって、政治の実権を握るようになったアブドラ皇太子は、国内のイスラム勢力の台頭に配慮して、国民の間で人気のある聖職者に政治的発言を許したり、王族の腐敗の抑制に努めたりした。

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