もっぱらアメリカを見て物を言い、横のものを縦にするだけの日本経済学――。それをいいことに、日本の実情に合わない理論を押し付けて、実験場扱いのアメリカ人学者があとを絶たない。 アメリカの経済学者は日本の経済学のスタンダードである。アメリカの有力経済学者がワシントンで要職に就くと、日本経済をアメリカ流に解釈しては日本の経済政策に注文を付ける。終戦時のGHQ(連合国軍総司令部)さながらだが、当時の日本にはきちんと反論、抵抗する気骨ある経済学者も政治家もいた。だが、今や日本の経済学者の多くが鸚鵡のごとくアメリカの学者をまねる。アカデミズムがそうだから、官僚も政治家も安心して対米追従を競う。ワシントン詣でをして「ご託宣」を聞いては東京に持ち帰ってお守りにする。黒澤明の『七人の侍』を知らない無知な若者が、ハリウッド映画『ラストサムライ』の描くサムライ精神を本物だと評価するような倒錯現象が日本の経済学者の世界で起きる。 アメリカ財務省のジョン・テイラー次官(国際担当)は十二月五日、ニューヨークの日本協会で講演した。「日本の過去の景気回復が公共事業支出に依存していたのと違って、今回は民間部門主導型の成長である。九二年から二〇〇〇年にかけ、日本政府は飛躍的な回復をめざして総合景気対策を打ち出し、総額で一兆ドル以上支出した。これらの対策は持続的な成長につながらなかったばかりか、日本は先進七カ国中最大の政府赤字を残した」――。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。