今年も一月二十一日から二十五日までの五日間、スイス東部の保養地ダボスでワールド・エコノミック・フォーラム(WEF)、通称「ダボス会議」が始まる。民間による運営にもかかわらず、現職の米国大統領など世界のトップ政治家が顔を見せることもあり、国際的なイベントとしてすっかり定着した。ところが開催地のスイスでは年々「歓迎」の声が小さくなり、むしろ「厄介モノ」扱いされ始めている。 この傾向は二〇〇一年九月の米同時テロ以降、決定的になった。欧州で最も安全な国といわれるスイスが、この会議のせいでテロの心配をしなければならなくなったからだ。実際、安全確保が難しいという理由で、二〇〇二年のダボス会議は急遽、開催地がニューヨークに移された経緯がある。 小国スイスにとって要人の警備は頭痛のタネだ。人口七百二十万人のスイスに警察官は全国で一万四千人余り。全国からの応援態勢は敷くものの、ダボス会議の警備に当たる警察官の総数は数百人規模に過ぎない。日本や米国のような物量作戦による警備というのは不可能に近いわけだ。昨年は谷の奥に位置するダボスの手前で交通規制を実施、村に入る人そのものを制限する手法をとった。 テロまで行かなくても反グローバリズムのデモ隊は現実の脅威として存在する。入村規制もあって反対派はチューリヒやベルンなど都市部でデモを行なっており、「ドーナツ化」が警察を悩ませる。

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