政府と拉致被害者の間の連絡役を務める中山恭子内閣官房参与。話しぶりはゆっくりと優しいが、内容にはしばしばトゲがある。 一月二十八日、名古屋で講演した際のこと。昨年十二月二十、二十一日、北京で平沢勝栄拉致議連事務局長らと北朝鮮の鄭泰和日朝交渉大使らが出席して行なわれた非公式会談は、「ブローカー」が介在していたと批判したのである。 ブローカーとは、広辞苑では「商行為の媒介を業とする者。仲買人。仲立人」とある。英和辞典には「黒幕」の表現もある。 中山参与が「ブローカー」と言及したのは、非公式会談に北朝鮮側のオブザーバーとして出席した吉田猛氏という人物のことだ。吉田氏は、日朝貿易専門の商社、新日本産業の社長。過去に幾度か、舞台裏で名前を取り沙汰された。一九九五年、連立与党訪朝団に加藤紘一事務所スタッフの一員として参加したことがある。 政府間の公式ルートから外れた裏交渉は信用できない、と中山参与は言うのだ。 拉致問題をめぐっては、日朝間でさまざまな人脈が行き来している。在京の南北関係筋によると、吉田氏の介入が取り沙汰される前には、「PPMの動きが目立っていた」のだという。PPMといっても、もちろん往年の人気フォークグループ、ピーター・ポール・アンド・マリーのことではない。

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