国会議事堂の前庭に植えられた梅の木が紅白に彩られる三月初旬は、来年度予算案をめぐる与野党攻防で国会が最も緊迫する季節である。予算案の年度内成立を目指し一日でも早く衆院通過を図ろうとする与党と、徹底審議を求めこれに抵抗する野党が火花を散らすのが例年の光景だ。昨年も大島理森農相(当時)の元秘書の政治資金流用疑惑などをめぐり野党側が衆院本会議開会に反対し、衆院通過が一日ずれ込む攻防劇があった。だが、今年は違った。ベタ凪国会。与野党の衝突音どころか摩擦音も響かなかった。 野党に政府、与党を追及する材料がなかったわけではない。日本歯科医師連盟(日歯連)のヤミ献金疑惑や北海道警や静岡県警の裏金づくり問題など、むしろ材料はありすぎるくらいだった。それが尻すぼみに終わった最大の理由は、追及する材料より追及される材料の方が多いという情けない現実だった。すべて民主党絡みのスキャンダル。攻防の先頭に立つべき野党第一党が逆襲を恐れ、腰を上げようにも上げられなかったのである。 自民党は前もって衆院予算委員会で野党議員五人の参考人招致を要求していた。昨年の衆院選の選挙違反で陣営幹部が起訴され連座制適用の可能性が出ている民主党の今野東(宮城1区)、鎌田さゆり(宮城2区)、都築譲(比例東海ブロック)の三氏と、政治家や官僚に銃弾を送り付けるなどした征伐隊事件の被告と親交があったとされる同じく民主党の西村真悟氏(大阪17区)、そして学歴詐称疑惑で先に民主党を除名された古賀潤一郎氏(福岡2区)。民主党も日歯連疑惑などで計約二十人の参考人を要求したが、これだけ脛に傷があっては強気の戦いはできない。それに加えて、新たな重量級の不祥事が民主党を直撃した。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。