ソ連崩壊に“貢献”したある男の自殺

執筆者:春名幹男2004年5月号

 米首都ワシントンのポトマック河畔に偉容を見せるウォーターゲート・ビル。幾多の歴史ドラマの舞台となったこの建物は、ホテル部分とマンション部分に分かれている。 東側の住居部分で昨年十一月二十五日、地上に飛び降り、死んだ者がいた。ジョージ・ワシントン大学客員講師、ガス・ワイス氏。享年七十二。 一般的には有名ではなかったが、情報関係者の間では知る人ぞ知るVIPだった。ニクソンからレーガンまで四代にわたって大統領に仕えた。カーター民主党政権で宇宙政策担当国防長官補佐官兼大統領情報委員会委員、ニクソン、フォード、レーガンの共和党政権で国家安全保障会議(NSC)スタッフを務めた。 米中央情報局(CIA)の功労章、国家安全保障局(NSA)の暗号賞、さらにCFM56という最高傑作の航空エンジンの米仏共同生産に貢献したとして、フランスのレジオンドヌール勲章までもらったほどの人物である。 ワイス氏の出身地テネシー州ナッシュビルの地元紙テネシアンは六日後の十二月一日、「死去の状況は確認できなかった」と苦しい表現で彼の死を伝えた。 だが、本当は「自殺だった」。このほど訪日した元米政府高官がそう教えてくれた。彼はレーガン政権時代、NSCでワイス氏と同僚で、筆者の旧友でもある。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。