富士通の「遠い夜明け」

執筆者:杜耕次2004年6月号

好決算が喧伝されるが、目につくのは資産売却による特別利益、ゼネコンと見紛う官公需頼みの収益構造だ。 逆境の時ほどリーダーは真価を問われる。人間であればミスジャッジは避けられないが、誤算にいち早く気づき即座に軌道修正すれば大事には到らない。だが、状況を把握できず自らを省みることもなければ、その指導者を戴いた組織は迷走を始める。数年来の富士通はまさに後者の例に当てはまるのではないか。「選択と集中」が世界の趨勢だが、富士通は半導体からソフトウエア、パソコン、大型汎用機までのフルラインナップを擁する。「世界市場でIBMと闘える唯一の日本企業」と秋草直之会長(六五)をはじめ経営陣は自負しているが、それは確固たる戦略というよりも、証券アナリストが異口同音に指摘するように「リストラ周回遅れの置き土産」の印象が濃い。 その富士通の業績にようやく明るさが見え始めたと報じられている。 四月二十七日に発表した二〇〇四年三月期連結決算では、売上高が前期比三・二%増の四兆七千六百六十九億円で三期ぶりの増収となったほか、本業の儲けを示す営業利益は同四九・七%増の一千五百三億円、さらに純損益が四百九十七億円の黒字に転換した。株価も急騰。決算発表に先立つ二十二日に業績の上方修正と二期ぶりの復配を明らかにして以降、翌日から五営業日連続で値上がり。二十二日終値から三十日終値まで一七%も跳ね上がった。

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