富士通の「遠い夜明け」

執筆者:安西巧 2004年6月号
タグ: 日本
エリア: アジア

好決算が喧伝されるが、目につくのは資産売却による特別利益、ゼネコンと見紛う官公需頼みの収益構造だ。 逆境の時ほどリーダーは真価を問われる。人間であればミスジャッジは避けられないが、誤算にいち早く気づき即座に軌道修正すれば大事には到らない。だが、状況を把握できず自らを省みることもなければ、その指導者を戴いた組織は迷走を始める。数年来の富士通はまさに後者の例に当てはまるのではないか。「選択と集中」が世界の趨勢だが、富士通は半導体からソフトウエア、パソコン、大型汎用機までのフルラインナップを擁する。「世界市場でIBMと闘える唯一の日本企業」と秋草直之会長(六五)をはじめ経営陣は自負しているが、それは確固たる戦略というよりも、証券アナリストが異口同音に指摘するように「リストラ周回遅れの置き土産」の印象が濃い。

カテゴリ: 経済・ビジネス 政治
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執筆者プロフィール
安西巧(あんざいたくみ) ジャーナリスト 1959年福岡県北九州市生まれ。1983年早稲田大学政治経済学部政治学科卒、日本経済新聞社入社。主に企業取材の第一線で記者活動。広島支局長、編集委員などを歴任し、2024年フリーに。フォーサイトでは「杜耕次」のペンネームでも執筆。著書に『経団連 落日の財界総本山』『広島はすごい』『マツダとカープ 松田ファミリーの100年史』(以上、新潮社)、『さらば国策産業 電力改革450日の迷走』『ソニー&松下 失われたDNA』『西武争奪 資産2兆円をめぐる攻防』『歴史に学ぶ プロ野球16球団拡大構想』(以上、日本経済新聞出版)など。
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