国連組織の中で、HIV・エイズ対策に最も多額の予算を割いているのが世界食糧計画(WFP)だと聞くと、意外に思う人も多いかもしれない。WFPは昨年、総予算約三十三億ドルのうち、二億ドルがエイズ関係だったという。 なぜ、飢餓との闘いを目的に作られたWFPが、エイズとの闘いの最前線に立っているのか?「特にアフリカでは、食糧難とエイズの問題は密接につながっています」と語るWFP日本事務所代表の玉村美保子さんは、さきごろアフリカのジンバブエとモザンビークを視察してきた。「アフリカ南部では、労働人口の約八割が農業セクターで働いていますが、モザンビークでは大人の一五%、ジンバブエでは総人口の少なくとも三分の一がHIVウイルスに感染しているといわれます。感染者が働けなくなると、農業生産が減って食糧難になる。エイズで親を失う子も多数いますから、彼らにも食糧援助が必要です。また、エイズ患者を抱える親類縁者の負担を減らし、家族単位で支え合う仕組みを維持するためにも食糧援助は有効です。さらに、免疫力を高めてエイズの発症を抑えるためにも栄養が必要です」 玉村さんは、「今の時代、突然の飢餓は起きない」と言う。衛星写真などの情報を分析すれば、いつどこで食糧不足が起きるか一年前には予測がつくからだ。世界のどこで作柄が悪くなるか予測しつつ、飢餓が起こらないように国際社会に支援を呼びかけて事前に介入するのが最近の援助のあり方なのだという。

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