公共事業など政府頼みの経済を体質改善したと主張する小泉政権。しかし実際には、一般には見えない形での財政支出が急拡大している。「景気回復が鮮明になってきた」と、有識者たちは言う。確かに物価のデフレ基調は和らぎ、日銀も二〇〇一年三月から続く量的緩和政策の解除を視野に入れ始めた。 金融政策の微妙な変化に債券市場は敏感で、長期金利は上昇基調を強めている。景気回復期待が高まれば、金利上昇は自然な反応だと言える。ただ、膨大な財政赤字を抱える日本経済には、これが致命傷ともなりかねない。景気回復も実は「見えない(ステルス)財政」に支えられている側面が強く、金融政策を引き締めると財政危機が表面化する恐れがある。 小泉政権は「改革なくして成長なし」をスローガンとして掲げてきた。経済政策を担う竹中平蔵経済財政担当相は、バブル崩壊後で三度目となる景気回復を、「財政支出が支えた過去の回復とは大きく違い、今回は民需が主導している」と自賛する。確かに財政出動の象徴である公共事業の抑制などによって、小泉政権は緊縮的な財政運営を行なった印象が強い。だが、「民需主導の回復」という言い分は本当に正しいのか。 小泉政権が発足した二〇〇一年度以降の公共事業は十兆三千六百七十六億円、九兆二千五百二十五億円、八兆九千百十七億円、そして今年度が八兆六千百四十九億円。その減り方は鈍るが、一応「土建国家」的な財政支出は緊縮されている。これだけを見れば民需主導に見えなくもないが、財政資金の使い方はいろいろだ。一般会計を使わない景気対策という裏技もある。その代表は、昨年から今年にかけて実施された大量の円売り・ドル買い介入だろう。

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