将来をチャンプに託す? ウクライナの閉塞感

執筆者:国末憲人2012年1月30日

 ぼたん雪が舞う1月のキエフを訪れた。前回来たのは、昨年4月のチェルノブイリ原発事故25周年シンポジウムに出席した時だから、9カ月ぶりである。ぱっと見た感じ、随分街が垢抜けた印象を受けた。


 ドニエプル川を渡る橋のたもとは迂回路の工事が終わり、名物の大渋滞が随分緩和された。以前のキエフはキリル文字だらけで、世界で最もラテン文字の少ない街とも言えたが、幹線道路に英語の案内板が登場した。ボリスピリ国際空港には国際線新ターミナルが完成し、新たにもう一つのターミナル建設も進む。もともと、人口でも産業規模でも潜在力が大きい街だったが、ここに来て近代都市の風格を備えてきた。
 

 これはひとえに、ポーランドとの共催で今年6月に開くサッカーの欧州選手権のお陰である。ウクライナが開催に名乗りを上げた時、「本当に大丈夫か」という懸念があちこちで上がった。その不安は、まだ消えたわけではない。メーン会場としてキエフ中心部に建設中のスタジアムは、一応オープニングイベントを開いたものの、工事がまだ終わっていないという。街の治安も、中心部は問題ないものの、一歩郊外に出るとおぼつかない。ウクライナは、2008年からの世界的な経済危機を受けて財政的に苦しい立場に追い込まれてもいる。
 

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。