仕上げに苦しむトニー・ブレアの「最終章」

執筆者:土生修一2005年5月号

若き首相の颯爽たる登場から八年、ブレアはいま労働党初の「三連覇」をめざす。しかし、昔日のカリスマは消え、「ブレア政治」の仕上げすらおぼつかない。[ロンドン発]トニー・ブレア英首相は四月五日、ダウニング街十番地の首相官邸前で、記者団に総選挙の五月五日実施を発表した。相変わらず口調は歯切れがいい。しかし、「公共サービス改善維持」、「国民が主人公」、「(総選挙は)大きな選択、大きな決断」と月並みの言葉が並び、開戦宣言としてはパンチ力のない内容だった。 ブレア労働党政権が勝利すれば、労働党の三連勝となり、百年の同党史上、初めての快挙となる。さらに同一党首下での総選挙三連勝は、近年では保守党のサッチャー氏が一九八七年に達成しただけだ。 支持率では、三月まで労働党が四〇%前後で保守党を五ポイント以上離している世論調査が多かったが、四月に入り様子が変わってきた。 大半の調査で、労働党のリードは三ポイント以内に縮小している。さらに、「絶対に投票に行く」と回答した有権者を対象にした大手世論調査機関MORIによる調査では、保守党支持が三九%で労働党を逆に五ポイント上回る結果となった。 英国が採用している単純小選挙区制は、一般的に政権党に有利とされている。「調査で保守党が数パーセント程度上回っても労働党勝利は動かない」というのが、専門家の多数意見だ。ただ、政権安定の指標となる与党と野党全体との議席差は前回の百六十五から大幅に減少しそうだ。

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