シリア問題をめぐる大国間外交が急激に動いている。この欄の前回の項でも記したが、9日のロシアのラブロフ外相によるシリアの化学兵器の国際管理および廃棄、そして化学兵器禁止条約への加盟を求める提案に、アメリカがイギリスやフランスと共に肯定的な反応を示したが、ここに中国も賛意を表明した。安保理で拒否権を持つ常任理事国すべてが、シリアに化学兵器を放棄させるという点で一致したことになる。ロシア訪問中のシリアのムアッレム外相は9日は提案を「歓迎する」とのみしていたが、翌10日にはシリア政府として「同意した」と発表している。

 フランスは早速、安保理決議案の提出の意思を表明しており、決議案ではシリアに化学兵器廃棄を義務づけ、それに違反した場合に「きわめて重大な」結果を招くという文言を盛り込むことを検討しているようである。軍事行動の裁可を意味するこの文言をロシアや中国が呑むかどうかわからないが、決議に反対すれば、やはりラブロフ提案は遅延行為だったとみなされることになるため、シリア問題をめぐってついに何らかの安保理決議を通さざるを得なくなるのではないか。ロシアと中国の拒否権に阻まれて、安保理決議に支えられた実効性のある国際介入の道が閉ざされてきたシリア内戦だが、ここで方向が大きく変わるかもしれない。ロシアも提案へのフォローアップの姿勢を見せている。

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