国際問題に発展したが……(筆者提供)

 

 岩波書店『広辞苑』の台湾関係の記述が、日本、中国、台湾で、大きな波紋を広げている。1972年の日中共同声明において、日本政府が、中華人民共和国に台湾が帰属すると認めたと書かれていることが、この問題の最大の論点である。累計発行部数1000万部を超え、日本を代表する大型辞典の記述のどこに問題があるのか綿密に検証を試みた。

岩波書店の「主張」

 現在発行されている広辞苑の「日中」の項目のなかにある「日中共同声明」の欄には、こう書かれている。

「1972年9月、北京で、田中角栄首相・大平正芳外相と中華人民共和国の周恩来首相・姫鵬飛外相とが調印した声明。戦争状態終結と日中の国交回復を表明したほか、日本は中華人民共和国を唯一の正統政府と認め、台湾がこれに実質的に帰属することを承認し、中国は賠償請求を放棄した」

 これに対して、台湾の大使館にあたる台北駐日経済文化代表処や、日本における台湾出身僑民団体「全日本台湾連合会」が、訂正を求めて岩波書店に抗議を行った。一方、中華人民共和国外交部のスポークスマンは記者会見でこの問題を問われ、「台湾が中国の1つの省ではないとでもいうのか。台湾は中国の領土の不可分の一部だ」と広辞苑の記述を擁護し、国際問題化した。

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