欧州の親ロ勢力の1人とみなされているオーストリアのセバスチャン・クルツ大統領
(C)AFP=時事

 

 オーストリアで2017年末、新政権が誕生した。中道右派「国民党」のホープ、31歳のセバスチャン・クルツを首班とし、ポピュリスト政党「自由党」が連立に加わった。自由党は内相と国防相を握り、外相にも系列の政治家を送り込むことに成功した。首相のクルツ自身も国民党内では移民や難民への厳しい態度で知られ、全般的に右翼色の強い政権である。

「統一ロシア」と密接な関係

 欧州ではこの1年、フランス大統領選挙で右翼「国民戦線」の候補マリーヌ・ルペンが敗れ、オランダ総選挙でもヘルト・ウィルダース率いる自由党が思ったほど伸びず、右翼ポピュリズムが後退傾向を見せていた。安堵していた欧州連合(EU)の各国は、しかしここにきて、再び懸念を抱く形となっている。

 ハンガリーのオルバン・ヴィクトル政権や、ヤロスワフ・カチンスキー率いるポーランドの「法と正義」政権のように、オーストリアも権威主義的な傾向を強め、リベラリズムや人権重視といった欧州の基本原則とぶつかる態度を取るのではないか。多くの人がまず懸念を抱くのは、この点である。ハンガリーやポーランドがEUの新参国家であるのに対し、オーストリアは古くから欧州の伝統形成を担ってきた国であり、何より単一通貨ユーロにも参加している。フランス国立科学研究センター研究員のパトリック・モローは政権発足直前の論考「オーストリア、右傾化」で「クルツは、公式にはEUと手を携えていくと表明しているものの、移民問題のような特定の課題が持ち上がった場合には、ヴィシェグラード・グループ(ポーランド、チェコ、スロバキア、ハンガリー)の立場を支持するだろう」と予測し、権威主義諸国の一群が中欧で影響力を強める可能性を指摘した。

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