イスラエルがシリアへのイランの軍事的拠点形成に脅威認識を高め、シリア領内への空爆の規模を拡大し、イスラエル・イラン間のより直接的な衝突への警戒感が高まっていたが、イスラエル北部に接するシリア南部からのイラン系部隊の撤退を、ロシアが仲裁して行うことで、当面の衝突が緩和されそうだ。シリア南部のダラア県とクネイトラ県からイランの軍事指導要員とヒズブッラーの勢力を撤退させ、シリア反体制勢力も武装解除させ、それをロシア軍警察が管理するという。シリア南部をめぐるイスラエルとイランの間の紛争の「兵力引き離し」を、ロシアをブローカーになって行うという形式のようだ。

 5月31日に、モスクワを訪問したイスラエルのリーベルマン国防相がロシアのショイグ国防相と会談し、この問題を話し合って一定の合意に達したとされる。

"'Iran, Hezbollah Prepping to Withdraw From Southern Syria Near Israel Border',” Haaretz, May 31, 2018.

 シリア南部については、昨年7月に基本合意がなされ11月11日に細部が発表された米・露・ヨルダンによる戦闘緩和(de-escalation)に関する合意があるが、イスラエルは、この合意に基本的に賛成していると見られるものの、イスラエルとの国境付近にイランとヒズブッラーの勢力が残ることを問題視し、必要に応じて独自の軍事行動を行うことを宣言してきた。

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