ブッシュ・ジョークの8年

執筆者:名越健郎2009年2月号

 米CBSテレビの深夜トークショーのキャスター、デービッド・レターマンは「米国の政治ジョークは過去8年間、空前の活況を呈した」と自賛したが、最大の功労者ブッシュ大統領は8年の任期を終えて退陣する。 英語の文法ミスから奇妙な言動、イラク、ハリケーン、リーマン・ショックといった相次ぐ失政で、ブッシュ時代の8年はネタに事欠かなかった。「不倫」のクリントン大統領と「軽い」ブッシュ大統領の計16年で、米国の政治ジョークは異常に高揚し、ホワイトハウスの威信は低下した。 ブッシュ大統領は12月14日、任期中最後のイラク訪問時に行なった記者会見でイラク人記者から靴を2度投げつけられ、これも格好のネタを提供した。平然とかわして「今の靴のサイズは10インチだね」と巧みに切り返したのは、トークショーも顔負けだった。 記者会見でブッシュ大統領がイラク人記者の靴をかわした後言った。「今のがイラクの大量破壊シューズだ」 イラク人記者の2投目を許したことを批判された米シークレットサービスの幹部が釈明した。「申し訳ない。次期大統領の警備に没頭していたので……」 ブッシュ大統領が靴をかわすのをテレビで見たイラン軍高官が部下に指示した。

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