2021年の中東を回顧するこのシリーズも、10回目でひとまず区切りとしたい。年末までにまた大きな動きがないことを祈るばかりである。

 締めくくりに、2021年にはトルコのエルドアン大統領の権勢に、ついに翳りが見られてきた点を、挙げておきたい。

「2023年」の共和国建国100周年に向けて

 トルコは2023年6月に大統領選挙が予定されている(これは政治情勢次第で、前倒しになることも予想されている)。2002年に公正発展党(AKP)政権が誕生し、エルドアン自身が翌年から正式に自ら政権を担当し始めて以来、20年近い月日が流れた。その統治の前半は、特にリーマン・ショックまでは、トルコ経済は高度成長を遂げた。特に恩恵を受けたのが、地方から都市周辺に移民した新興中間層である。イスタンブールやアンカラ、イズミルなど大都市圏の周辺部に形成されていたスプロール地帯のスラム街は一掃され、住民は代わりに建てられたタワーマンションに移り住んだ。彼らこそがエルドアン・AKP支持層である。選挙結果が示されるたびに、大都市中心部は反エルドアン・反AKPだが、それを孤島のように取り囲んで、大都市圏の広大な縁辺部はエルドアン・AKP支持で塗り尽くされる。

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