12月24日、ウクライナの港オデッサに入港したフランス海軍の新鋭フリゲート艦「オーヴェルニュ」(C)AFP=時事

 ウクライナ国境にロシア軍部隊が集結し、ロシアによるウクライナへの「さらなる侵攻」が懸念されている。ロシアの意図の分析や行動の予測と同時に、今回の事態への米欧の対応を理解することが不可欠だ。米国を中心とする、いわゆる西側陣営の危機対応策やその能力という観点で、日本にも直接的に影響する問題だ。

 そこで以下では、今回の事態にNATO(北大西洋条約機構)やEU(欧州連合)を含む米欧がいかに対応しようとしているのかを検証したい。

NATO非加盟国ゆえに部隊派遣なし

 まず前提として指摘すべきは、今回懸念されているのが「さらなる侵攻」の有無だ、ということである。実際、NATOなどの公式声明では「さらなる侵攻」という用語が使われることが多い。

 というのも、2014年のロシアによるウクライナのクリミア併合、そしてウクライナ東部への介入など、ロシアはすでにウクライナに侵攻しているという事実があるからだ。特にウクライナ東部に関しては、2014年以降で、およそ1万3000名が犠牲になっている(国連人権高等弁務官事務所推計)。この内訳は、民間人3350名、ウクライナ軍兵士4100名、武装組織5650名である。武装組織にはロシア軍兵士も含まれる。

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