ポーランドのピエカリ・スラスキエで、家の地下に石炭をかき込む男性[2022年10月27日](C)REUTERS/Kacper Pempel

[ブリュッセル発(トムソン・ロイター財団)]EU(欧州連合)が温室効果ガスの規制対象を暖房や輸送燃料に拡げる準備を進めるなか、政治家たちはフランスの「黄色いベスト運動」のような社会不安が起きることを懸念している。「黄色いベスト運動」は2018年、ディーゼルへの課税によって消費者が打撃を受けたことで始まった。生活費の高騰と、一般市民が温暖化対策の負担を背負わされることへの不公平感に対する抗議運動は、フランスの政策を後退させた。この一件は、環境対策は公平に進めなければいけないという教訓ともなっている。

 EUは2027年から建築物や道路運輸に二酸化炭素排出コストを課すが、こうした炭素市場の見直しの中には、家計や中小企業の負担を和らげる社会気候基金の構想も含まれている。

 社会気候基金について、知っておくべきことを説明しよう。

そもそも、EUはなぜ社会気候基金を設立するのか? 

 2021年7月に発表されたこの基金は、何千もの工場や発電所の温室効果ガス排出に上限を設けた排出量取引制度(ETS)の改革に関する交渉の中から生まれた。

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