2020年のSABIC買収が石化戦略の転機になった[リヤドのキング・アブドラ金融地区(KAFD)にあるアラムコ・タワー=2023年4月16日](C)AFP=時事

 岸田文雄首相が7月に訪問し、協力関係の強化で一致したサウジアラビア。事実上の指導者であるムハンマド・ビン・サルマーン皇太子が、国のありようを変えるような大改革に取り組む。石油に頼れない時代に向けた皇太子の「ビジョン」を支えるのは、ほかならぬ石油収入であり、国営石油会社サウジアラムコである。アラムコの事業方針に、サウジの脱炭素時代の生き残りへの戦略がにじむ。

 アラムコは7月21日、中国の栄盛石油化学有限公司の発行済み株式を246億人民元(34億ドル、約4800億円)で取得する取引を完了したと発表した。ムハンマド・カハターニ下流部門担当社長は「栄盛とのパートナーシップを通じて、中国での存在感を高められる。アラムコの長期的な戦略の重要部分を成す」と述べた。

 アラムコの戦略とはなにか。ひとことで言えば、アジアシフトと下流シフトである。

アジアシフトを敷く「石油化学産業の巨人」

 世界的には脱炭素の流れが加速し、石油の需要はやがてピークアウトするとみられる。しかし、石油化学製品の需要はそう簡単に減退はしない。プラスチック、肥料、包装、衣料などわれわれの生活に、原料としての石油化学製品は欠かせない。ソーラーパネルや風力タービンブレード、電気自動車など、脱炭素時代を支えるのも化石燃料由来の製品群なのだ。

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