3日の円相場は一時1ドル=150円台に下落、円安進行による物価高も懸念される[「ニューヨーク経済クラブ」主催の会合で講演した岸田首相=2023年9月21日、アメリカ・ニューヨーク] 写真:首相官邸ホームページ

 政策というのは打つべきタイミングがある。一見正しそうな政策に見えても、タイミングがズレると逆効果をもたらす。そんな典型が、岸田文雄首相が打ち出した「資産運用特区」構想だ。

 岸田首相は9月21日にニューヨーク経済クラブで講演した。「我が国で我々が行っていることを評価していただき、我が国経済の底力と将来の計画をよく見ていただき、日本に投資いただくことを強く求めたい」と米国の投資家や経済人に呼び掛けたが、その「目玉」が「資産運用特区の創設」だった。

「海外からの参入を促進するため、資産運用特区を創設し、英語のみで行政対応が完結するよう規制改革し、ビジネス環境や生活環境の整備を重点的に進める。世界の投資家のニーズに沿った改革を進めるため、皆さんも参加いただいて、日米を基軸に、資産運用フォーラムを立ち上げたい」

アベノミクスの「焼き直し」

「特区」と言えば、安倍晋三元首相が推めたアベノミクスで「国家戦略特区」を規制改革を行う武器としたことで知られる。「岩盤」として名指しした農業、医療、労働市場の改革が注目されたが、海外からの投資を受け入れるための規制緩和は大きな課題であり続けた。「金融特区」を設け、様々な申請書類を英語で認めることや、金融機関などで働く外国人が仕事や生活するうえでの環境整備を進めることは、当初から掲げられていた。岸田首相が言及した具体策は、ほとんどすべて10年前のアベノミクスの「焼き直し」と言っていい。

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