※聞き手・岩田泰征 京都大学総合人間学部4回生

 

佐伯啓思(以下、佐伯) 今年5月のG7広島サミットではウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領が来日して、平和の重要性について語りました。ただ、「平和」とはそもそもどういう意味なのか。

 アメリカにとって、あるいはジョー・バイデン大統領にとっての「平和」とは、リベラルな価値観、普遍的な価値観を世界全体に行き渡らせることを意味する。もちろん、それを主導するのはアメリカです。この試みがうまくいった時、世界は平和になると考えている。

 一方、ウクライナにとっての「平和」とは、とにかくロシア軍を追い払うこと、目の前の戦争に勝つことでしょう。

 では日本は、岸田文雄首相は何を「平和」と考えたのでしょうか。

 G7広島サミットにおいて、日本は西側諸国の一員としてウクライナを支援すると言った。それは、西側にとって普遍的な価値である「自由民主主義」を日本も広める、という意味だったのか。それとも、ウクライナがロシア軍を追い払い戦争に勝利することを日本も手助けする、という意味だったのか。あるいはもっと別の意味だったのか。そういう問題についてほとんど議論されていないように思います。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。