トルコのイスタンブールに滞在している。

 9月半ばに1週間ほどイスラエル・テルアビブに滞在し、客員研究員の資格も与えられている国家安全保障研究所(INSS)で今後の共同研究の打ち合わせ、INSSに日本から高名な先生を迎えて中国問題のディスカッションを設定するなどしたが、その後トルコに移り、3週間近く滞在していた。ここのところ試みている、トルコとイスラエルを軸とした中東の地域秩序の変動の現地調査・分析活動の延長である。

 昨年のイスラエルへの重点的な滞在による調査・関与の拠点形成を経て、イスラエルと中東地域政治における行動に共通性がありつつ、イスラエルとは対照的に国土・人口の大きさと厚みがあり、ある言い方によれば地政学的な「縦深性」があるトルコにも、活動の重点を置き拠点を築く作業を行っているところである。

 トルコでは、日本から大規模な有識者の訪問団を組織して、「前乗り」して受け入れ、イスタンブールでの公開講演会公開シンポジウム、アンカラでの非公開シンポジウムなどを主催して実施し、政府・与党系から独立系までの研究機関や大学を回ってトルコの有識者・政策論者の活力と「厚み」を感じ取り、訪問団を送り出した後も、トルコ側の反応を探りに私が残り、イスタンブールとアンカラを往復して面会・訪問を行いながら過ごしてきた。これらの仕事をひとまず締めくくって、イスラエルに戻ろうとする矢先の10月7日に、パレスチナのガザ地区を支配するハマースによる大規模なイスラエルへの越境攻撃が行われ、イスラエルによる大規模なガザ攻撃が開始された。事態は急速に進展しており、全容の把握にはなおも時間がかかる。危険を避けながら情報収集をし、有識者と議論し、自ら考えて分析をまとめるには、時差もほぼなく2時間ほどのフライトで繋がったトルコ・イスタンブールは適切な場と言える(トルコ航空はこれほどの戦闘にもかかわらず、変わりなく、イスタンブール・テルアビブ便を毎日多く飛ばし続けている)。

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