アメリカの関与や助言がイスラエルの軍事行動に一定程度の影響を与え、戦火の地域全体への拡大を防ぐことができるかが、現状の大きな着目点である[会談するバイデン大統領(左)とネタニヤフ首相(右)=2023年10月18日、イスラエル、テルアビブ](C)EPA=時事

 2023年10月7日、ハマスのテロリストがガザからイスラエル側へと越境攻撃を仕掛け、無辜のイスラエルの市民、及び兵士を残虐に殺害し、200人以上もの人質をガザに拉致した恐ろしい映像は、世界に衝撃を与えた。この前代未聞のテロ攻撃を経て、今後事態がどのように展開するかを予測するのは時期尚早だ。ただし、このテロ攻撃の最悪の結果は、中東の平和と安全保障に広範かつ永続的な影響を及ぼす、地域全体を巻き込んだ戦争である。果たしてどういう状況下で、イスラエルとハマスの戦争が中東地域、そして世界に重大な影響を及ぼすような大規模戦争へと拡大するのだろうか。

 イスラエル国防軍はガザへの苛烈な空爆に加え、本格的な地上侵攻へと新たな段階に進んている。イスラエルのハマスへの報復措置がこの両者間を超えて、中東域内の他の国やアクターを巻き込み地域全体に戦火が飛び火した場合、中東の地政学は大きく変わるであろう。しかし、影響は中東に留まらない可能性もある。イスラエルとサウジアラビアの国交正常化交渉の仲介を含めて、中東において自国に有利な戦略的環境を創出し、同地域への関与の度合いを漸進的に下げながら、西太平洋とヨーロッパでの大国間競合に再び集中する環境を整備してきたジョー・バイデン政権からすると、この戦争が地域全体を巻き込んだものに拡大し、アメリカの長期的な国防戦略に深刻な影響を及ぼすのは一番避けたいシナリオだ。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。