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【前回まで】都倉響子は、CIAの上席分析官・レビンの「尋問」を受ける。彼が示す写真には、留学時代の親友・劉唯の顔が。彼女は今では諜報機関で対日工作のエキスパートだという。

 

Episode5 四面楚歌

 

18(承前)

 数枚の英文の文書が、副官から差し出された。

「そこに劉唯の略歴があります」

 1ページ目にある略歴には、彼女が中国に帰国後、国家安全部に籍を置き、着実にキャリアを積み上げていった軌跡が記されていた。

「失礼ですが、先生は、劉が帰国後、連絡が取れなくなったと仰っていますが、それを裏付ける証拠がありますか」

「そんな証拠なんて……。もしかして、私を中国のモグラだとおっしゃりたいんですか」

 レビンは、再び沈黙して都倉を見つめていたが、やがて肩をすくめた。

「失礼しました。そんなつもりはありません。ですが、かつてのご学友だったとはいえ、華首相が、先生をあんなデリケートな外交案件に引きずり込むには、それなりの理由があると考えなかったのですか」

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