連載小説 オペレーションF[フォース] 第55回
2024年3月9日
【前回まで】都倉の防衛大臣就任会見から呼び戻された草刈は、「第二のロッキード事件」の取材を命じられる。米国の軍事産業から、防衛省や政治家に賄賂が渡っているというのだ。
Episode6 一世一代
2(承前)
「それで、私に何を?」
その問いに答えたのは、児玉だった。
「まず、舩井と仲良くなれ」
「都倉さんではなく、ですか」
「本丸は、舩井らしい」
事実なら大スキャンダルだ。尤も、常にアメリカ寄りの発言や行動ばかりが目立った舩井なら、ありえそうだ。
「私は、舩井さんに取材した経験なんてありませんが」
「舩井は、大臣を辞めさせられたこと、さらには、先の潜水艦事故で、防衛出動しなかったことに怒り狂っているらしい。だから、想いの丈をウチの美人記者に語って欲しい、とオファーしたら、快諾されたよ」
それは、セクハラではという言葉は呑み込んだ。舩井の女好きは有名で、取材を受けた女性記者を呑みに誘っていると、週刊誌にも書かれていた。
だから、取材の後、呑みに誘われたら、喜んで行けということだ。
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