4月12日、東平壌大劇場で開催された「朝中親善の年」の開幕式(『労働新聞』HPより)
 

 4月8日付1面トップには、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長によるロシアのウラジーミル・プーチン大統領宛の慰問電文が紹介された。「慰問電文」は、天災などに見舞われた各国の首脳に対して送られるものであり、今回は5日にロシア南部のオレンブルク州で発生した大規模な洪水に対して見舞いの言葉を述べている。金正日(キム・ジョンイル)政権期から金正恩政権初期にかけては一貫して金永南(キム・ヨンナム)最高人民会議常任委員会委員長が送付していた。

 ただし金正日時代においては、慰問電文が『労働新聞』で紹介されること自体がきわめて稀であり、金正恩による慰問電文が頻繁に掲載されるようになったのは2014年以降のことである。2019年4月からは金永南に代わってその後任となった崔龍海(チェ・リョンヘ)が送るようになったが、2020年2月に死去した旧ソ連元帥の遺族に金正恩が慰問電文を送って以降、各国首脳宛ての電文発信者も完全に金正恩へと切り替わった。昨年はシリア大統領への1通だけであったが、今年は既に4通目となった。1月には岸田文雄総理とイラン大統領に、3月にはモスクワ郊外で発生したテロ事件に際してプーチンに慰問電文が送られ、今回の大洪水に際して再びプーチン宛の慰問電文が掲載された。これまでに『労働新聞』が紹介した金正恩の慰問電文はわずか10通に過ぎず、宛先はロシア、キューバ、中国、シリア、イラン、それに日本に限られていることに鑑みると、1月5日の岸田総理への慰問電文がいかに際立った存在であったかがよく分かる。

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