Weekly北朝鮮『労働新聞』 (46)

異例中の異例、金正恩から岸田総理への「見舞い電」(2023年12月31日~1月6日)

執筆者:礒﨑敦仁 2024年1月9日
タグ: 金正恩 北朝鮮
エリア: アジア
金正恩が重要軍用台車生産工場を現地指導したという5日付の記事で、「お嬢さま」の存在が初めて単独で紹介された(『労働新聞』HPより)
能登半島地震の被害に対する金正恩国務委員長から岸田総理への見舞い電が掲載された。その意図は現時点で断定できないが、極めて異例の行動であることは確かだ。韓国については「同族という概念はわれわれの認識から削除された」と言及する一方、中国との関係は安定しているとみられる。『労働新聞』注目記事を毎週解読
 

 1月6日付第2面下段には、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が岸田文雄総理宛に送った前日付の見舞い電(「慰問電文」)が掲載された。金正恩が日本の総理に電文を送ること自体が初めてのことである。

 2011年の東日本大震災に際しては3月14日に朝鮮赤十字会中央委員会の張在彦(チャン・ジェオン)委員長が日本赤十字社の近衛忠煇社長宛に、21日に金永南(キム・ヨンナム)最高人民会議常任委員長が朝鮮総聯の徐萬述(ソ・マンスル)中央常任委員会議長宛にそれぞれ見舞い電を送っていた。24日には金正日(キム・ジョンイル)国防委員長が被災した在日朝鮮人に50万ドル、朝鮮赤十字会中央委員会が日本赤十字社に10万ドルの見舞金をそれぞれ送ったと報じられていた(肩書はいずれも当時)。

 そのことから比較すれば、「日本国総理大臣岸田文雄閣下」宛の見舞い電が在日朝鮮人にとどまらず、「あなたとあなたを通じて遺族と被害者に心からの同情と慰問を表します」「被害地域の人々が一日も早く地震被害の影響から脱して安定した生活を回復することを祈願します」としたのは異例中の異例である。4日付と5日付は、元日に発生した令和6年能登半島地震についてその事実を短く、論評抜きで伝えただけであった。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
礒﨑敦仁(いそざきあつひと) 慶應義塾大学教授。専門は北朝鮮政治。1975年生まれ。慶應義塾大学商学部中退。韓国・ソウル大学大学院博士課程に留学。在中国日本国大使館専門調査員、外務省第三国際情報官室専門分析員、警察大学校専門講師、米国・ジョージワシントン大学客員研究員、ウッドロー・ウィルソンセンター客員研究員など歴任。著書に『北朝鮮と観光』(毎日新聞出版)、共著に『最新版北朝鮮入門』(東洋経済新報社)など。
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