Weekly北朝鮮『労働新聞』
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金正恩による軍事訓練参観が相次ぐ――巡航ミサイル・自爆ドローン対策も(2025年5月11日~5月17日)

執筆者:礒﨑敦仁 2025年5月19日
タグ: 金正恩 北朝鮮
エリア: アジア
北朝鮮は4月末にロシア・ウクライナ戦争への派兵を内外に公表しており、金正恩国務委員長による訓練参観は軍の士気高揚を意識したものだと言える[2025年5月14日](C)EPA=時事
金正恩国務委員長はロシア派兵の意義を強調し、軍の訓練を相次いで参観した。李永吉総参謀長は「現代化の要求」に一日も早く対応する必要を説く。敵の巡航ミサイルの迎撃や、電子戦によるドローンの無効化なども訓練された。【『労働新聞』注目記事を毎週解読】

 5月14日付は第1面から第2面上段にかけて、「首都防御軍団第60訓練所」にて開催された兵種別戦術総合訓練を金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が参観したことについて報じた。「朝鮮人民軍第7回訓練指揮官大会」の一環として開催されたという。

 金正恩は、「最も重要な戦線は反帝階級戦線」であると述べ、「訓練に情報化システムと科学的判定システムを導入し、新世紀の発展推移に応じて訓練制度を新たに定立する必要性」について言及し、指揮官の「主導性と自立性、創意性」を高めるよう求めた。「反帝」はロシアとの共闘におけるキーワードである。

 第2面下段には、「ロシア連邦大統領が、朝鮮民主主義人民共和国の軍人が発揮した戦闘能力と勇敢さ、英雄主義を評価」と題する記事も掲載された。11日、ウラジーミル・プーチン大統領がクレムリンで行った記者会見において、クルスク州奪還作戦への北朝鮮軍人の貢献を称えたことについて紹介したものである。国民に対して派兵の意義を説明付ける記事だと言える。

 第7回訓練指揮官大会の開催については、17日付第3面で報じられた。前回は7年前に「第6回訓練指揮官熱誠者大会」として開催されたという。今次大会で報告を行った李永吉(リ・ヨンギル)総参謀長は、金正恩の指導により実戦戦力を備えるうえで革新的な変化が起きているなどと成果を強調する一方、「必ず克服しなくてはならない偏向的問題」についても指摘した。討論者の発言として、「訓練部門を一日も早く党の軍事戦略的構想と現代戦の要求に相応した高みに引き上げる」といった表現も見られたが、克服すべき課題の具体的内容については明らかにされていない。

 17日付は2ページを使って、近衛第1空軍師団管下の飛行連隊による訓練を金正恩が指導したことについて報じた。

カテゴリ: 政治 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
礒﨑敦仁(いそざきあつひと) 慶應義塾大学教授。専門は北朝鮮政治。1975年生まれ。慶應義塾大学商学部中退。韓国・ソウル大学大学院博士課程に留学。在中国日本国大使館専門調査員、外務省第三国際情報官室専門分析員、警察大学校専門講師、米国・ジョージワシントン大学客員研究員、ウッドロー・ウィルソンセンター客員研究員など歴任。著書に『北朝鮮と観光』(毎日新聞出版)、共著に『最新版北朝鮮入門』(東洋経済新報社)など。
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